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十五歳の殺人者/卯月恭一【全25話】

2011年04月10日(日)

【第1話】平成十五年七月の日曜日、うだるような暑い盛夏の午後だった。

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暑い最中に、刑務所の実態を取材したいというアメリカの団体から来訪を受けた。世界人権擁護団――その団体に所属する二人の白人と、通訳の男性と、さらに日本の監獄人権センターの職員とが連れ立って、私のあばら家に来た。

六畳と四畳半の安アパートだ。

取材の目的は、「日本の刑務所の実態調査」だった。私も殺人を犯し、刑務所に十五年間入っていた。今はボランティア活動をしているし、刑務所関係の書物も著しているためか、私に取材依頼が来たのだ。私の他には、強盗殺人で無期懲役の河出喜美雄と、猟奇殺人で死刑を求刑されていた藤代拓馬を呼び、私の家で会見した。(物語の主人公は、この猟奇殺人犯の藤代です)

狭い家に七人も入ると、冷房が効かなくなるほど暑くなり、熱気でむんむんした。

調査員の取材は、聞き取り調査だ。日本の刑務所の現状をあれこれと尋ねられて、そのつど、私らは答えた。

「私が収容されていた大阪刑務所第四区は、厳しさでは日本一やった。いや、他のムショについては詳しくは知らへんけど、みんなそう言うてる。貧乏揺すりをしただけで、『房内で運動したらあかんやないか』って、保護房のドアの視察孔から刑務官に怒鳴られたこともあった。人権や尊厳はないですね。『貧乏揺すりが、どうして運動なんですか?』って、確認したんです。そしたら、『少しでも身体を動かせば運動や。房内にあっては、一切の動作をしてはいけない、という規則があるんや』って言われました」

河出の話は、もっと具体的だった。

「例えば、タオルの端が一センチずれていて注意を受けると、減点一点。無断で席を異動して注意され、謝らなかったら、減点二点。歯磨き粉と歯ブラシの整頓位置が違うと、減点一点。寝る時に毛布を頭まで覆っていたので翌朝注意を受けた。毛布で顔を隠してはいけないという規則があるため、素直に謝っても、減点二点。職員の指示に対して敏速な行動をしなかった場合は、減点三点。月に十点の減点を食らうと、懲罰一週間。ホンマにひどいでしょ。最近はかなり改善されとるそうやけど」

もちろん刑務官側にも、言い分がある。特に大阪刑務所四区は殺人犯がほとんどだから、規則で縛らないと、対処できないというわけである。

藤代も、こんな話を喋った。

「工場で作業中に小便に行きたくなっても、まともに取り合ってくれんがです。『小便をお願いします』と、受刑者がいくら担当に申し出ても、『あと一時間ほどしたら休憩や。お前に許したら、他の者にもみんな許可せなあかんから、決まりに従え』とか言われるがです。結局、我慢できずに漏らした奴もいたがぜ」

高知県出身の藤代は、顔を顰めながら、土佐弁で喋った。

この手の小便事件は、大阪刑務所だけでなく、神戸刑務所でもあったと、私も聞いている。

取材は三時間ほどだったが、私らは熱心に語った。やがて調査員たちは礼を述べて、帰っていった。その後、三人は近所の安い居酒屋へ、久しぶりにそろって飲みに出かけた――。

私は、河出とも藤代とも、ムショで出会った。河出は平成八年に、藤代は十年の春に仮釈放された。私が務めを終えたのは、平成五年だから、シャバに出てから、すでに十年が経つ。

死刑を求刑された藤代だったが、少年法によって無期懲役となり、大阪刑務所第四区に収容された。大刑四区での担当たちからの恫喝と凌虐を、十八年も耐えぬいてきた藤代は、逮捕されてから約二十二年後に、夢にまでみた仮釈放となった。

藤代は、出所後は大阪市北区にあるボランティアの保護会に身を寄せて、そこから、本町にある印刷会社に通勤していた。

ある日、私は中崎町の商店街へ買物に行った。その時、向こうから背の高い男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

〈藤代によう似てるな……〉

藤代は、身長が百九十センチ。だから目立つし、ムショでも際立っていた。バレーボールの選手並みに背が高く、ひょろっとしているので、印象が強く残る。

近寄ってくる男は、まぎれもなく藤代だった。

「よお、藤代やないか、いつ出所したのや?」

「わぁ、大久保さんかえ。十年の四月に仮釈放になったがです」

「よかったな。今、どこに勤めているんや?」

「本町にあるヨツバ印刷です。大刑(だいけい)で印刷の仕事をしよったがやき、その経験が生かされちゅうがです」

「ヨツバ印刷ちゅうたら、確か河出も勤めてるんと違うか。何度か河出とも会ってるからな」

「そうです。ただ、河出さんは独立して、自分で会社を立ち上げたがです」

「ほう、そうやったんか。最近、遊びに来いへんと思ってたら、社長になっとったんか」

「ええ、まあ」

言葉を濁し、嫌そうな顔をしたので、河出と何かトラブルでもあったのかと、私は勘繰った。

「とにかく道で立ち話もなんやから、お茶でも飲みながら話そうや」

「大久保さんは、今どこに住んじょるがですか?」

「俺は、この近くや」

「それじゃ、大久保さんのところへ行ってみたい」

「そうやな、じゃ俺のところへ案内しようか」

私は藤代を伴って、中崎町のあばら屋に帰った。

これが出所後に藤代に会った始まりで、それからは何かあると藤代は私のところに電話をしてきたり、訪ねて来たりした。私はできる限り、私の知っている社会的知識を教えた。

(つづく)

ライタープロフィール

卯月恭一

卯月恭一

エロスと猟奇殺人事件が脳に疼く犯罪系ライター。詐欺犯、覚せい剤犯、元殺人犯などと交流があるが、本人はいたってまじめな性格。飲み屋では風俗と変態話で盛り上がる。

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